プラスチックの基礎知識「プラスチックの比重」

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プラスチックの比重

 プラスチックは種類によって比重が異なります。従って、何種類かのプラスチックが混ざってしまった成型品や破砕品も、比重によって分離できる場合があります。 但し、ガラス繊維等の強化剤やタンカル、タルクなどの増量剤、改質剤が添加されたものは、比重が変わるため注意が必要です。

代表的な分離法について

 プラスチックの比重分離の例として、水あるいは塩水を利用した分離法について紹介します。
市場より回収されたPETボトルを例にとります。回収されたボトルは、キャップ、ラベルが付いた状態のまま破砕、洗浄されます。ボトル本体はPET、ボトルに巻きつけてあるラベルはPS、キャップはPPです。よってこのままでは複数の種類のプラスチックが混じった状態で再利用できません。各プラスチックの比重は、本体PETが一番重く1.38〜1.39、ラベルのPSが次いで1.04〜1.07、キャップのPPが最も軽く0.90〜0.91です。水の比重は1.00ですので、キャップのPEは水に浮き、本体PET、ラベルPSは沈むということです。まず、破砕物を水の水槽を通すことにより、キャップのPPを分離できます。本体、ラベルは共に水に沈みますが、ラベル(PS)の比重は水より僅かに重いだけです。そこで水に塩を加え、その塩水の比重をPSの1.04〜1.07以上、本体のPETの比重よりは軽い1.38以下にしてやれば、本体のPETは沈み、ラベルのPSは浮き、本体のPET部分のみを分離抽出できるわけです。もちろん破砕の状態により多少の混入は避けられませんが、ある程度のレベルまでは上記方法で分離が可能です。


ペットボトル 余談ですが、当初はお茶のボトルを中心に本体PET部分が緑色のボトルも存在しましたが、リサイクルを考えると無色透明(原色)が望ましいとの判断からか、次第にボトル本体は原色に統一されているようです。そのため上記の分離法で回収したPETは原色品となっていました。当然、他の色が混じっていない原色品は再生品として使用できる用途は広くなります。

 ところが、ここ最近、ラベルやキャップを本体と同じPETに変えようという動きがあるようです。普通に考えると、一つの種類のプラスチックに統一されると分離の手間もなく、よい案だと思われます。しかし上記工程でもわかるように、同一種類になると、比重による分離はできず、必然的に色や印刷の付いたラベル・キャップと、原色の本体部分を分けることが出来ず、リサイクル用途の広い原色品を得るのが難しくなってしまうのです。これを有難迷惑とでもいうのでしょうか。リサイクル工程をよく確認してから立案してほしいと、リサイクルに関わる業者が言っておりました。まあ、また彼らは異なった分離方法を考えだすでしょうけれど・・・。

〔2006年6月執筆〕

 

追記:
上記分離法を執筆後、知り合いのK氏に現在の回収PETボトルのリサイクル方法を確認したところ、塩水を使った分離は今はほとんど行われていないとのことでした。 では、最新の分離法をご紹介いたしましょう。
まず、自動選別機か手選別(ブラックライトを利用)でPVC(塩ビ)ボトルを除去します。(※大手メーカーではPVCボトルは今やほとんど使用されていませんが、地場の小規模醤油メーカーなどでは現在でもPVCボトルを使用しているところがあるため、この工程が必要のようです。消費者にはPETボトルとPVCボトルの区別はつきませんので。但し、これには地域性があるかもしれません。)

  次に、PETボトルをキャップ(PP)、ラベル(PS)ごと粗く粉砕します。この粗粉砕を風力選別機の中に通し、軽いラベルを風で飛ばし、落とします。残った粗粉砕品を再度粉砕にかけ細かくします。次に、粉砕品をラベルセパレーターと呼ばれる機械に通し、残ったラベルを更に除去します。ラベルセパレーターの原理は、粉砕品の下部より、“PETボトル本体部の粉砕は浮かないが、軽いラベルは浮き上がる”強さのエアを吹き上げ、浮き上がった細かいラベルを横からバキューム(吸引機)で吸いとるというものです。このほか各所で篩(ふるい)工程も挟み、細かいラベルの粉も除去します。(また、各所に金属探知機、強力マグネットを設置し、金属の異物も除去します。)これらの工程を経るとPSラベルのほとんどが除去され(この方法だと、ラベルがPET製でも除去できます)、残りはボトル部分のPETとキャップのPPだけとなります。これらを水を張った水槽に通し比重でPETとPPを分離します。最後に化成ソーダなどでアルカリ洗浄をし、すすぎ工程を経て、乾燥となります。 聞くところによると、やはりお茶(爽健美茶など)の一部のPETボトルのラベルはPSではなくPETで、キャップもPPではなくPEのものもあるようです。またキャップ内の中栓部分はEVAやPEとのことです。

〔2006年9月追記〕

 

参考として下にプラスチック種類ごとの比重の一覧をあげます。

比重一覧表

 

軽い

比重
ポリエチレン(PE) ポリプロピレン(PP) EVA
1.0未満 HDPE 0.95〜0.97
LDPE 0.92〜0.93
LLDPE 0.92〜0.94
0.90〜0.91 0.92〜0.94
1.0〜1.1
ポリスチレン(PS) ABS樹脂 AS樹脂
GPPS 1.04〜1.05
HIPS 1.03〜1.06
1.01〜1.21 1.06〜1.08
ポリフェニレンエーテル(変性PPE) ナイロン66 非強化 MS樹脂
1.04〜1.09 1.07〜1.09 1.06〜1.13
1.1〜1.2
ナイロン6 非強化 メタクリル(アクリル)樹脂
(PMMA,AC)
 
1.12〜1.14 1.17〜1.20  
1.2〜1.3
ポリカーボネート樹脂(PC) ポリサルホン樹脂(PSU) ポリエーテルイミド樹脂(PEI)
1.20 1.24〜1.25 1.27
ポリウレタン樹脂(PU)    
1.20    
1.3〜1.4
PBT樹脂 非強化  PET樹脂 非強化 塩化ビニル樹脂(PVC)
1.30〜1.38 1.29〜1.40 硬質 1.30〜1.58
軟質 1.16〜1.35
ナイロン6
GF強化(30〜35%) 
ナイロン66
GF強化(33%) 
 
1.35〜1.42 1.33〜1.34  
1.4〜1.5
PBT樹脂 GF強化(30%) ポリアセタール樹脂(POM)  
1.48〜1.53 1.42  
1.5〜1.7
PET樹脂 GF強化(30%)     
1.55〜1.70    
1.7以上
フッ素樹脂     
1.77〜2.20    

重い

 

 

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